「家族を優先してください」
「フォローは会社組織でします」
父親になってから、部下にこう伝えることが増えました。私自身が7カ月の育休を取り、家族と過ごす時間の大切さを実感したことも、今の仕事の進め方につながっています。
ただ、部下に家族を優先してほしいと思う一方で、職場には日々の仕事があります。誰かが休むとき、その人が担っていた仕事をどうするのか。残った人にすべてを引き受けてもらうのであれば、休む人が変わるたびに、別の誰かへ負担が移るだけです。
だから私は、管理職として何を「今はやらない」と決めるかを大切にしています。
自分の育休から、部下の家族時間へ
以前は、仕事を頑張り、成果を出すことが生き甲斐でした。
40歳で初めて父親になったとき、私は部下を持つマネージャーやプロジェクトリーダーの立場にいました。長い社会人人生の中で、家族のためだけに過ごす時間を持ちたいと考え、7カ月の育休を取りました。
その時間を経て、家族3人でいることが、私の生活の中心になりました。
誰かが休むなら、仕事の量も調整する
復職後、私は以前よりも無駄な仕事をしないようになりました。「やらなければいけない仕事」と「やった方がよい仕事」を分け、日頃から業務にある程度の余力を残すことを意識しています。
その余力として考えているのが、「やった方がよい仕事」です。状況に応じて後回しにできる部分を、普段から持っておく。私にとって、これは部下の休みを組織で支えるための考え方でもあります。
部下が家族の事情で休むとき、まず考えるのは、その分の仕事を誰に割り振るかではありません。今やらなくてもよい仕事は何か、後回しにできる仕事は何か。そこから決めます。
一人分の工数が欠けたのに、組織全体で同じ量の仕事をやり続けようとすれば、どこかに無理が生じます。残った人たちで全部を引き受けようとすると、特定の人に負荷が集中しかねません。
だから、欠けた工数に合わせて業務量を調整します。休む人の仕事をそのまま誰かに渡すのではなく、組織として今できる仕事の量を見直す。私が「フォローは会社組織でします」と伝えるときに考えているのは、そういう調整です。
「やらないこと」を決める管理職の責任
私が考える優秀なマネージャーとは、「やること」を増やす人ではなく、「やらないこと」を決められる人です。
「やる」と決めた仕事は、努力を重ねることで実現できる場合が多いと思います。一方で、「やらない」と決めるには、仕事の優先順位を見極めるだけでなく、周囲の期待を断り、その結果に責任を持つ覚悟が求められます。
必要に応じて、上層部や関係部署に延期をお願いすることもあります。仕事を減らす判断は、単に予定から項目を消すことではありません。今は取り組まないという判断も、その結果も、上長である私が引き受けるということです。
組織の資源は有限です。すべてを「やる」という判断は、結局、何を「やらない」かを決めていないのと同じだと考えています。
仕事を引き受ける人を増やせないときは、引き受ける仕事の量を見直す。部下に家族を優先してほしいと伝えるからこそ、残る人にも過度な負担をかけないようにする。そのための優先順位と延期の判断は、私の役割です。
部下の長期育休を聞いて、嬉しかったこと
私が7カ月の育休を取ることを職場へ伝えたとき、後輩から「マネージャーが率先して7カ月も育休を取ってくれるから、取りやすくなります」と言われたことがありました。
その後、私を参考にして長期間の育休を取った部下がいて、後から報告してくれました。その話を聞いたとき、私の行動が部下の一押しになってくれたのだなと、嬉しく思いました。
私自身、7カ月の育休を取ってよかったと感じています。家族と一緒に過ごす時間が、今では何よりの宝物になっています。
私が部下に「家族を優先してください」と伝えるとき、その言葉を支えるのは、休む人にも残る人にも目を向けた仕事の調整だと思っています。「今はやらない」と決め、その判断に責任を持つことを、これからも大切にしたいです。
男性がもっと長期の育休を取りやすい社会になればいい。自分が育休を取ってよかったこと、そして部下の一押しになれたと感じて嬉しかったこと。私がこのブログを作っているのも、そんな経験と思いがあるからです。
