子どもが生まれた当時、私は部下を持つマネージャーやプロジェクトリーダーとして働いていました。
周囲に育休を取ったマネージャーはいませんでした。男性が育休を取る場合でも、大抵は1カ月程度でした。
そんな中で、私は7カ月間の育休を取ることにしました。
長い社会人人生の中で、家族のためだけに過ごす時間を持ちたい。そんな思いもあって選んだ期間でした。
ただ、そう決めたあとも、「管理職でこんなに休んでも良いのか」という後ろめたさは残っていました。育休に入るまでの過程で、特に印象に残っているのが、自分の業務を引き継ぐために棚卸ししたときの感覚と、後輩からもらった一言です。
引き継ぎの棚卸しで強くなった後ろめたさ
後ろめたさを最も強く感じたのは、自分の業務を引き継ぐために棚卸ししていたときでした。
改めて並べてみると、引き継ぐ仕事はかなりの量でした。
「誰がこれだけの量をさばいてくれるのだろうか」
そう思うと、仕事を渡される人への申し訳なさがありました。同時に、自分の仕事を自分でやりきれないことへの葛藤もありました。
また、周りで頑張っている人たちに対する後ろめたさもありました。
育休を取ると決めたからといって、職場への気持ちまで簡単に切り替わるわけではありませんでした。
家族のために7カ月休みたいという思いと、仕事を残して職場を離れることへの気持ちは、私の中では別のものでした。
後輩から言われた一言
育休を取ることを会社に伝えたとき、後輩からこんなことを言われました。
「マネージャーが率先して7カ月も育休を取ってくれるから、取りやすくなります」
この言葉は、自分が気にしていたこととは違う方向から、育休を見るきっかけになりました。
私は、自分が休むことで周りに負担をかけることを気にしていました。
一方で後輩は、管理職の私が先に取ることで、育休を取りやすくなると言ってくれました。
業務であれ、有休であれ、残業をゼロにすることであれ、上司が率先してやることは、部下や後輩の精神的な支えになるんだなと感じました。
自分では家族のために選んだ7カ月間でしたが、その行動を別の立場から見ている人もいる。後輩の言葉を聞いて、私はそこに気づきました。
復帰してから、今度は自分が伝える側になった
育休から復帰して1年ほど経った頃だったと思います。
ある部下から育休について相談を受け、面談をしました。
私は自分の育休の経験も話しながら、経済的な不安が出ない範囲で、できる限り長く育休を取ることを勧めました。また、業務のことは気にしなくてよいという趣旨も伝えました。
育休に入る前の私は、「管理職でこんなに休んでも良いのか」と考えていました。
その私が、今度は部下に、仕事を気にせず育休を取ってほしいと伝える側になっていました。
私を参考にして長期間の育休を取得し、後から報告してくれた部下もいました。
その話を聞いたとき、自分が育休を取ったことで、間接的に誰かの役に立てたんだなぁと思いました。
良い面だけでは語れない
もちろん、7カ月間の育休を良い面だけで語るつもりはありません。
引き継ぎのために自分の業務を棚卸ししたとき、「誰がこれだけの量をさばいてくれるのだろうか」と感じたのは事実です。
私が休むことで、業務上の負荷をかけた人もいると思っています。
一方で、後輩から「取りやすくなる」と言ってもらえたことや、その後に自分を参考に長期育休を取った部下がいたことも、私が実際に経験したことです。
仕事を引き継ぐ人への申し訳なさと、自分の選択が間接的に誰かの役に立ったという実感。その両方が、私の中には残っています。
片方だけを残すと、私自身が経験した7カ月間とは少し違うものになってしまいます。
家族のために選んだ7カ月が、その先につながった
私は最初から、誰かが育休を取りやすくなるようにと思ってこの期間を選んだわけではありません。
長い社会人人生の中で、家族のためだけに過ごす時間を持ちたい。
それは、育休を取るときに私が大切にしていた思いでした。
だから、後輩からあの言葉をもらったことも、その後に部下が長期育休を取ったことも、私にとっては後から見えてきたものです。
振り返ると、家族と過ごした時間だけではなく、間接的に誰かの役に立てたという側面も残りました。
「上司ならこうするべきだ」と言うつもりはありません。
私自身、仕事を引き継ぐときには後ろめたさも葛藤もありました。それでも、後輩の言葉と、その後の部下とのやり取りを経験して、上司が先に動くことには、自分が思っていたのとは違う意味もあるのだと感じています。
育休を取ることの良い側面については、まだ情報が少ないと私は感じています。だからこそ、後ろめたさも含めたうえで、こうした良い側面があったことは、もっと広げていきたいと思っています。
